自然との対話を大事にする当店のアクティビティは、カヤックをメインにしています。その理由は、 自然の息吹、地球の鼓動をもっとも敏感に感じ取ることのできる乗り物だからです。
なぜカヤックなのか?
まずはじめに素朴な疑問として
カヌーとカヤックってどう違うんですか?
初歩の初歩として、疑問を持ってらっしゃる方が非常に多いです。
なのでごく簡単にお答えいたします。
{Kayak}
カヤック
船体の大部分が閉じていて(クローズドデッキ)、コクピット部分だけ開いている小舟がカヤックです。そこに乗り込み、下半身をすっぽり船体内におさめると、自分自身がカヤックそのものと化したような一体感が生まれます。
グリーンランドやアラスカ、シベリアといった厳しい極北の海に生きた先史民族の狩猟用革張りカヤックが、そのルーツです。のちのちプラスチック素材で作られるようになって、現在のような遊びや旅の道具となったのです。川用のものはリバーカヤック、海用のものはシーカヤックと呼ばれます。
シーカヤックのデッキの前後にはハッチ(荷室)が設置されたものが多く、そこにテントその他キャンプ用品一式を積んで海岸線を旅することができます。長大な海岸線に囲まれた日本は、まさにシーカヤックをするためにあるような国ではないでしょうか?
{Canoe}
カヌー
丸木をくり抜いたかのように船体が開いている(オープンデッキ)小舟がカヌーです。写真のタイプは北米内陸部のインディアンを起源とする「カナディアンカヌー」と呼ばれるものです。カナディアンカヌーは流れのゆったりした川や湖でのツーリングや釣りに向いています。そのほかにポリネシアやミクロネシアの人々が使用した、巨大な外洋航海カヌーも存在します。
またカヌー胴体の脇に浮力材を取り付けた「アウトリガーカヌー」というタイプのものはスポーティなカヌーとして人気があります。
余談ですが日本神話に「枯野(カノー)」という舟が登場しますが、それはカヌーのことだと言われています。カヤックと同様、ものすごく古い時代からあったというわけです。
厳密にいうと上記のようになりますが、実のところ、大昔から存在する人力の小舟のことを総称して世界中でカヌーと呼ばれていて、カヤックをカヌーと呼んでも差し支えありません。
ちなみにポリネシア、ミクロネシア、メラネシアと「環太平洋圏」に共通して広がるのがカヌーで海を渡る文化ですが、「ヤポネシア」と呼ばれる日本列島にも大昔にカヌー文化があり、言わば「環太平洋カヌー文化圏」の端っこに位置する場所とも言えます。ぼくたちシーカヤッカーはそのようなスケールの価値観を持って太古からの海文化を現代に蘇らせ、未来につないでゆく活動も行っています。
About Yuasa-wan Field
湯浅湾フィールドについて
ツアー参加もよし、自艇でのホームゲレンデにするもよし、関西圏から日帰りでき、末永く楽しめる一級フィールド。
①栖原海岸~あやめの浜
足場のよい白砂の海岸で、当ツアーのスタート地点。美しくカーブを描く入り江の奥は「あやめの浜」と呼ばれる。近辺は特に穏やかなので、他の場所が相当荒れていても漕ぐことができるゾーン。このエリアから眺める海に沈みゆく夕日はひときわ美しく、当店のサンセットカヤック&SUPツアーで人気。
②霧崎付近の海岸線
あやめの浜から続く小さい岬を超え、さらに霧崎という突き出た岬までの間の海岸線。山の断崖からそのまま海になだれ落ちる巨石、奇岩のオンパレードで、野性的な雰囲気がある。例えば、ウミガメ岩(white Turtle rock)などが有名(その岩の裏側の隠れ家のような静水ゾーンは「癒しスポット」としても好評)。岩々の合間にふとシークレットビーチや洞窟が顔をのぞかせる。その付近でのシュノーケリングも楽しい。
③毛無(けなし)島
一応島とカウントされているが、海からズボっと突き出た2つの岩礁地帯で、上陸はできない。ここはウミウの営巣地、ウミネコの越冬地になっていて、彼らの大量のフンの中に含有される強い酸により植物が生えない、というのが名前の由来。しかし近づいてよく眺めると、断崖に小さな美しい花が咲いていたりして心をなごませる。周辺は浅瀬で、越冬後のチヌ(クロダイ)やマダイの産卵場にもなっている。
④苅藻(かるも)島
湯浅湾の真ん中に浮かぶ、南北2つ並ぶ小島の総称。北は「ヨコカルモ」、南は「タテカルモ」とも呼ばれる。「ヨコカルモ」に上陸できる小さな浜があり、そこでお昼休憩することも多い。夏場はシュノーケリングもできる。また島の東端に階段がついていて、そこを歩いていくと島の端から端まで散策できる。突端から眺める大海原の景色はスケール大きく、さぞ驚くことだろう。島周辺には大きな洞窟や隠れ家のような水路があり、シーカヤックで巡るのが楽しい。鎌倉時代の高僧、明恵(みょうえ)上人が愛し、島そのものにラブレターを送った島としても知られる。島頂上には彼の石像が鎮座し、その瞳は釈迦生誕の地、インドを見つめている。
⑤小浜(おばま)海岸
霧崎を回って北に行くと、弓なりになった入り江が出てくる。そこが小浜海岸だ。ここも休憩時に上陸することが多い場所。自然の造形が見事なジャリ浜海岸だが、地元の人しか知らない穴場的存在である。北端には神秘的な洞窟があり、波の穏やかな時には奥までカヤックで入っていける。その洞窟の上の断崖に登り、大きく見渡す紀伊水道の眺めは雄大で、しばし時間を忘れて見入ってしまう。
⑥やびつ海岸
湯浅湾の北側沿岸、有田川を隔てて半島状になった美しい海辺。この海岸線は陸からは容易に近づくことができず、手付かずの自然が多く残っている。70~100mほどの山から直角に断崖が崩れ落ち、巨岩群が見る者の遠近感を麻痺させるかのようなリアルさで迫りくる。断崖の合間には所々砂浜海岸が点在し、プライベートビーチ的な感覚で上陸できる。北風の風裏にもなるので、晩秋~冬場に強い。冬場の天気のよい日には太陽光線が海辺を優しく照らし、別世界のような雰囲気を醸しだす。
⑦宮崎の鼻周辺
湯浅湾の最北端に位置する岬。岬の先端付近は「船の墓場」とも「船を飲み込む龍の住処」とも言われる航海の難所だが、そのピンポイントを外せば、穏やかな日和ならば十分漕げる。小さい浜に上陸し、細い小道を歩いていけばやがて「宮崎の鼻」灯台にまでたどり着く。そこからの眺めは圧巻で、そのスケールの雄大さ、優美さ、野性感覚が素晴らしい。秋~春にかけて穏やかな時には、ほんの経験2、3回ほどの人でもここまで漕いでくることができるが、通常はベテラン向きエリア。
⑧鷹島(たかしま)
かるも島から南西を眺めると、目と鼻のような近距離に大きなクジラ型の島が見える。それが鷹島だ。標高が108mと結構高いため近くに見えるが、実際漕ぐと距離があり、漕いでも漕いでもなかなか近づいてこない。島の南側には2ケ所の砂浜があり、そのうち西側の浜はキャンプにも適している。またこの島には縄文遺跡があり、いにしえの海洋民族はここを拠点としてカヌーに乗り、南は八丈島、北は東北地方とかなりの遠方まで交易の旅に出ていたという。
⑨名南風(なばえ)の鼻周辺
ハエというのはプンプン飛び回るやつではなく、南風のことを呼ぶ漁師言葉。この周辺は「黒瀬川構造体」という地質で、地質学の専門家筋には「湯浅湾のナバエ」と言うと知らない人はいないらしい。地形が変化に富んでいて、シーカヤッカーには、とても特徴的な洞窟があることで知られている。
⑩西広海岸
かわいいチビカニたちがちょこちょこ歩き回る広大な干潟・西広海岸(トイレ完備でキャンプにも最も適した場所)。干潟という自然形態は全国的にとても希少なのだが、それがここには広範囲に残っている。干潮時に干し出す海底に描かれた波形砂痕は独特で、フォトジェニックでもある。かなりの遠浅で、普段は穏やかだが、台風などのうねりが入った時にはサーフィンに適した波が立つ。
⑪黒島
干潮時のみ上陸できる浜が一ケ所だけあるが、あとは全て断崖に覆われた神秘的な島。4億年前の地層で、悠久の年月、波や風に洗われて形成された洞窟が無数に存在する。迷路のような穴、袋小路の穴、見事に島を貫通する穴、満潮時だけ抜けられる穴・・・・・、洞窟めぐりするだけでも一日たっぷり楽しめる島。
⑫白崎海岸
山ひとつ分ほどもある2億年前・白亜紀の石灰岩がそびえる、湯浅湾の南端の岬。なぜかここにくるといつも時間感覚が、地球的・惑星的なスケールにすら感じられて不思議だ。そしてここらあたりから黒潮の息吹がひとしお濃密に感じられてくる。南方へのいざない・・・。